どんな絵本?
歳をとって毎日がつまらないと思いながら生きているライオンのジオジオが、灰色の鳥と出会い、生きる喜びを見つけていく、1978年発行のロングセラーの人気絵本です。
読者は最後のページで年老いたライオン、ジオジオのたどりついた幸せを見ることができます。
作品紹介
岸田衿子:作 中谷千代子:絵
出版社 :福音館書店
サイズ :27×20㎝
ページ数:20p
発行年 :1978年
こんな方におすすめ
・3歳からおすすめのロングセラー絵本をさがしている方
・温かくやさしい気持ちになる絵本をさがしている方
・ライオンがでてくる絵本をさがしている方
どんなおはなし?
歳をとったライオンのジオジオは、ひとりぼっちでつまらない毎日を過ごしていました。
そんなある日6つの卵を全部なくしてしまったという灰色の鳥に出会います。
ジオジオは灰色の鳥に、自分の頭の上のかんむりの中に卵を産んではどうかと提案します。
頭の上の卵と灰色の鳥を守りながら過ごすジオジオ。やがて卵がかえる時がきて、、、
あさり目線
この絵本は、私がずっと大切にしたいなと思う絵本のなかのひとつです。
そのため保護するためにブックコートフィルムまでかけてあります。
ストーリー、無駄のない文章、絵の雰囲気、全てが好きなのです。
読み終えたとき、何かとてもいいものをもらったような気持ちになる絵本
この絵本はちっとも派手ではありません。大きく盛り上がる展開もありません。
たんたんと、穏やかなストーリーです。
ですから人によっては物足りなく感じるかもしれません。
ですが私にとっては、読み終わると心が温かくなるというか、何かとてもいいものをもらったような気持ちになる絵本です。
子どもたちにとってライオンは「一番強くて、怖い」イメージでしょう。
そのライオンがこの絵本ではお年寄りのライオン、ジオジオとして登場します。
この絵本の中で描かれるジオジオの姿は、子どもたちに歳をとるとはこういうことなんだと、感じさせてくれるかもしれません。
歳をとったジオジオは体力も気力も無くなり、つまらない毎日を過ごしていました。
そんなとき6つの卵を全部なくしたという灰色の鳥に出会います。
この出会いが、ジオジオの毎日を、人生を変えます。
灰色の鳥と卵を守るという役割と責任を得たジオジオ。
ジオジオが心の奥に持っていた歳をとっても誰かと関わりたい、誰かのために何かをしてあげたいという思いが叶います。
そしてジオジオの人生は、生き生きとし喜びを感じられるものになっていきます。
ジオジオと灰色の鳥が向かい合って話す場面があるのですが、これはきっと昔の若いころのジオジオでは考えられないことです。
百獣の王ライオンと小さな鳥が、対極にいるふたりが、向かい合って話すのですから。
ふたりの関係性が変わるとてもいい場面です。
ここからふたり一緒に卵を守る日々が始まります。
ジオジオが灰色の鳥と会話しながら森の中を歩く場面では、楽しそうな嬉しそうないい表情をしています。
きっと仲のいい友達であり信頼しあう同志になったのでしょうね。
それから時が過ぎ春が来ていよいよ卵がかえります。
ジオジオの頭の上で、ちっち、ちっちとなくひなたちのなんて可愛いこと。
ジオジオにとっては今まで大切に守ってきた卵から無事にひながかえり、うれしくてたまらなかったことでしょう。
そして最後のページをでは、年老いて目が見えなくなったジオジオがいます。
小鳥たちに囲まれてその表情はとても幸せそう。
生きている喜びを感じているにちがいありません。
ちょっと個性的な文体と美しい日本語の無駄のない文章
この絵本のなかには「つよかったのです」「しまうのです」「いたのです」というような「〇〇のです」という文体が何か所か出てきます。
この言い方により、その場面場面の様子(状況)がより強調され印象付けられます。
なにより美しい日本語で書かれた無駄のない文章がいいですね。
独特の風合いのある絵がいい
表紙を見てみましょう。裏表紙も広げるとジオジオの姿全体を見ることができます。
頭に元気なひなたちを載せた、ジオジオのちょっととぼけたような誇らしげな表情には、何とも言えないほほえましさがあります。
この絵本の画家、中谷千代子さんは、ジオジオを描くために動物園でイメージに合うライオンを探し、ジオジオを生み出したそうです。
ペン画に油絵具を使用しているという中谷さんの絵には、独特の風合いと雰囲気があります。
私は全ての場面(絵)が好きですが、特に好きなのは、上でも書いたジオジオが灰色の鳥と卵を頭に載せて森の中を歩く場面です。
太い木々に囲まれた緑の森の中を、悠々と嬉しそうにあるくジオジオの姿が、とても生き生きと感じられるからです。
ぜひみなさんにもお気に入りのジオジオの姿を見つけてほしいと思います。
ジオジオのかんむりは命を守り育てるかんむりになった
ジオジオが若いころ、頭の上のかんむりは強い王様の印でした。
それが歳をとって、命を守り育てるやさしく温かいかんむりになりました。
ジオジオの人生は灰色の鳥との出会いで変わりました。
ジオジオは生きる喜びを知り、今までとは違う新しい、自分だけの幸せにたどりついたのです。
読み終えたときお子さんは何を感じるでしょうか?
『ジオジオのかんむり』の世界をぜひお子さんとご一緒にをお楽しみください♪